「今日から男子テニス部のマネージャーになっただ!」
「あ、本当にマネージャーになってる」
おいおい開口一番それかよ
SPARKLING
「ほら!挨拶しな」
「っち!…です、よろしく」
(竜崎先生に舌打ちしたああああああああああ!!!)
「初っ端から愛想ない感じだね、まあ良い。アンタ達よろしくしてやりな!」
そう言った顧問は各自に練習を言い渡しどこかに言ってしまった。トコトコと女子がオレに近付いてくる(コイツが南波よしの…)「えっとくんだよね?よろしく!」そう言って手を差し出してきたが無視してそのまま歩き出す、後ろから彼女が着いてきた
「なに?」
「あはは、嫌われちゃったかな私…仕事分からないでしょ?教えてあげる」
「ああ、たしかに」
敵とはいえまずは教えてもらうに越したことはないな。と思い素直に指示に従う、ドリンクを作ってタオルを洗ってそれを運ぼうとすると南波が声を上げた
「っあ!おもっ」
「(なんだその猫なで声は!オレに持てとでも?)」
めんどくせえと思いつつ仕事が速く終わらないのは困るので彼女の持っていたボトルケースをひったくると練習をしている人たちのそばに置いておき元の位置に戻った。南波が寄ってくる、すこしシュンッとした感じで「ありがとう」と言ってきた。多分これは演技だ(なるほどココはさしずめ彼女の城って所か)下手な演技だなと思いつつそれを無視すると彼女は悔しそうに顔を歪めた
「くんは私に優しくないね」
「誰もが皆君に優しくする生き物だって思ってるならお門違いもはなはだしいな」
「…くん、私の正体知ってるね?」
ボスとは違う直感的な物言いでそう言って来た南波にオレの身体は微かに跳ね上がった。なるほど裏社会に身を置いているだけの器ではあるな…マリナーラボスの愛娘でありながら次期ボスって言う所だろう、冷ややかな目を向けて「だから?」と返した
「あは!やっぱりなー。今すぐ出て行ってちょうだいな」
「それは無理、オレは君と君の父親の目的を潰すためにここに来た。」
早速素性がバレたならしょうがないと思い正直に目的を話すと彼女は高らかに笑った(あ、もしかして)ちょっと呆れた思いが脳裏をかすめる、いやいやでも相手は一応マフィアだし
そのまま南波は携帯を取り出すと慣れた手つきで電話をかけた
「あ!おとうさま?よしのですわ。なんだかボンゴレからの刺客が来てしまったみたいで…ええ、ええ。そうなの私の居場所も奪うつもりみたいなの…私こわくて」
「ひょっとして君はバカだろ」
そう言うとムッとした顔をして電話を切った彼女は勝ち誇ったような笑みでオレに言って来た「私の居場所を奪うと言うのなら賭けをしましょう?」だからお前はバカだろう!(むしろこんなあっさり終わる依頼なら編入した意味自体無駄じゃないか!ちくしょう雲雀め!)呆れた目を彼女に向ける
「今日の夜、マリナーラファミリーは貴方を殺すべく総力をつくして戦いますわ。負けたら私達はボンゴレファミリーからも手を引きここからも消える。それでどう?」
「まあ、良いけど…(一日で終わってしまうなんて、そんな!ちくしょうボスに恥ずかしい台詞を言ってしまったではないか!恥ずかしい!)」
返事をすれば彼女は満足気にその場から立ち去った。
はあ、っとため息を吐き出すと近くからトーントーンとボールを叩く音がする、なぜだがその音が気になってそこへ足を運ぶと少し小柄な少年がラケットを上手くつかいながら壁打ちをしていた、オレには気づいていないらしく随分大量の汗を流している。しばらくそれを眺めているとボールが勢い良くこちらに向かってきた(まさかの攻撃!)
「あっ…」
オレはそのボールを片手でキャッチすると少年が駆け寄ってきた「あんた、マネージャーの…」帽子越しにオレの顔色をうかがってくる
「だ、随分必死だったけど。何?これも練習?」
「まあね、っていうかごめん…」
「ああ、これ?」
そう言ってボールを投げて渡す
「そう。でも、あんたの動体視力並じゃないね」
「普通だよ」
「…不二センパイには視力が良くないって言ったけど嘘だ」
「意外な繋がりだ、それに周りとジャージも違うし…ひょっとしてレギュラー?」
「あたり、勘も良いみたいだね」
薄く笑いながら近付いてきた彼にオレは名前を聞いた、越前リョーマと言うらしい。越前はオレにグイッと近付き髪と目を凝視した「めずらしい?」オレがそう返すと頷いた
「まあ、目も髪も自前。髪を伸ばしてるのは願掛けみたいなもん」
「ふうん、女子みたいなことするんだね」
「そう言うことをしたくなる時もある」
そう言って彼から離れるとトコトコ後ろを着いてきた、コートに付く頃には同じクラスの菊丸と不二が寄って来る。
2人も越前と同じジャージを着ているなーと思っていたら他のメンバーもゾロゾロと足並みそろえてオレのもとにやって来た(なんなんだこれは!)並盛ではありえない光景に若干腰が引けたがグッと平静を保って周りの成り行きを見守ることにした
「やあ、さっきぶりだね。まさか竜崎先生に舌打ちするような男だとは思わなかったけど」
「なにそれ、嫌味?」
「クス、そんなんじゃないよ。度胸があるなーって」
「そうそう!オレ達が舌打ちしたら…か、考えるだけでおそろしいにゃー」
不二と菊丸が喋ると後から「そうっすよねー」なんて相槌が聞こえる、やっぱり嫌味だろ!と思って不二を見ると不二はただにっこりと笑っているだけだった(なんか山本と同じニオイがするんだけど気のせい?)そうして談笑した後に各々オレに自己紹介を始めた(自己紹介されたところでとんぼ返りだから意味ないと思うんだけどな)話を聞きながらぼんやりと雲雀に対して何て恨み言を言おうかと思っているとメガネの男子生徒が手を伸ばしてきた
「部長の手塚だ。これから俺達のサポート…よろしくたのむ」
「あ、ああ」
その手を握り返して、自分の手のひらを見つめた
(なんか、悪いことしてないのに悪いことをしているみたいだ)
(ああ、そうか)
きっとオレは自分が嫌いな嘘をついたんだな、と思った
(ボスに会いたい)